その便秘こそ大腸ガンの黄信号 私たち専門医も、患者さんを診断した後、しばしば便秘薬を処方します。
3章 まずは便秘の予防から
(1)間違いだらけの便秘常識
実は、専門医が処方する便秘薬と、どこでも手軽に買える市販の便秘薬の成分はほとんど変わらないのですが、医師は患者さんの便秘状態を的確に把握したうえで、適切な指示とともに処方をしています。
けれども、自分で市販の便秘薬を買って日常的に飲んでいる人は、やがて、定められた量をはるかにオーバーした大量の便秘薬を平気で飲むようになってしまいます。薬局で自由に買える便秘薬だからと、医師から処方される薬より気軽に考える人が多いのですが、本当はもっと注意して使わないと危険なものなのです。
内服する下剤には、便のボリュームを多くして便を出させるタイプの容量下剤と大腸粘膜を刺激して運動を起こさせる刺激系下剤の二つがあります。
便の量を増やすタイプというのは、大腸に便から水分を吸収させないタイプということです。そもそも、大腸というのは便から水分を吸収して便の量を少なくし、一定時間溜めておく便の貯蔵庫なわけですが、便から水分を吸収できなければ、便はいつまでも大きいままで、あとからあとから増えてくるので、排便せざるをえなくなるというわけです。
原理としては、下剤の中にマグネシウムのような電解質がたくさん含まれていて、浸透圧の関係で、大腸が便の水分を奪えなくしてしまう仕組みです。
効き方は穏やかですし、便はいつまでも水分を含んだままで柔らかいわけですが、逆におなかが張ることがあり、あまり人気がありません。
市販されている便秘薬は漢方を含めて、90%以上が大腸の腸管刺激剤です。
困るのは、人間というのは必ず刺激に慣れてしまう生き物だということです。
最初は飲めばすぐに効いた刺激薬も、継続的に使用しているうちに必ず耐性≠ェ生まれてだんだん刺激に馴れてしまいます。最初は効いていた便秘薬が効かなくなり、どんどん強い刺激を与えなければ便意を感じなくなってしまうのです。はじめはときどき使っていたものがだんだん毎日使うようになり(習慣性)、そのうちに下剤がないと自力では出せなくなります(依存性)。
それでひどい場合には、一度に30錠、あるいは一〇〇錠という信じられないような量を飲んでいる人がいます。
あまりに増えてきて怖くなってやっと医師のところへきます。
下剤の乱用により、ひどい低カリウム血症でした。このためにさらに腸が動かなくなり、便秘をひどくしていたのです。
しかも、下剤の強い刺激にならされると、なかなか自分の自律神経の刺激では動かなくなっています。薬の刺激をやめて時間をかけて自力で出す習慣を取り戻さなくてはなりません。